よほど怖い夢でも見て居るのだろう。
とにかく、起こした方が良さそうだ。
「藍ちゃん。起きるんだ、藍ちゃん!」
拓郎は、苦しそうに涙を流しながらうなされている藍の肩を、『とんとん』と軽く叩いた。
力を入れた訳ではない。気付かせようと、ごく軽く叩いただけだった。だが藍は、叩いた当の拓郎が驚くくらい過剰な反応を示した。
悲鳴に近い声をその口からほとばしらせ、藍は身体を大きく仰け反らせる。
「藍! 藍ちゃん!」
あまりのうなされように危機感を覚え、拓郎は思わず震える藍を抱き起こした。そのまま抱える腕にギュっと腕に力を込める。
藍は体を強ばらせた後、はっとしたように目を開けた。
「え? あ……」
一瞬、自分が何処に居るのかが分からない様子で、怯えたようにゆっくりと視線を巡らせる。
「大丈夫か?」
「芝……崎さん」



