蒼いラビリンス~眠り姫に優しいキスを~


子猫の『しらたま』という名前は、二人で案を出し合って最終的には藍が決めたものだ。


『猫の名前って普通、どんな感じの名前を付けるんですか?』と藍が言うので、タマとかミーとかトラとか候補を出していたら、何となく『しらたま』という名前に落ち着いたのだった。


由来は、『白いタマ』を縮めて、ついでに可愛らしく平仮名にしてたみたのだそうだ。


可愛いかどうかはさておき、あまり聞いたことがないユニークな名前には違いない。


子供の頃からずっと憧れていたと言う『ペット』への藍の傾倒ぶりは、傍目で見ていても拓郎が少し妬けるほどだった。


でもやはり、いつも側に生き物の気配が有るというのは、精神衛生的にも良いのだろう。


もともと暗い性格の娘ではないが、子猫の『しらたま』が来てからのここ一週間は、目に見えてその表情が明るくなっていた。


拓郎も捨て猫を拾って来てしまう位には動物好きなので、小さな子猫が部屋の中を走り回ったり、カーテンをよじ登ったり、膝の上でゴロゴロ喉を鳴らして眠ってみたりするのを、楽しんでいたのだ。


それにしても、危惧していたこととはいえ、まだ一週間。


「……いくら何でも、早すぎるだろう」