――どうして、悪い予感ほどよく当たるのか。
夕闇に包まれる町並みを縫って、アパートへと車を走らせながら、拓郎は小さなため息をついた。
佐藤家から子猫を貰い受けて一週間ほど経ったこの日の夕方、拓郎は仕事先で始めて、藍からの電話を受けた。
仕事と言っても相手が居るわけではなく、アルバイトをしている雑誌社のスナップ写真を撮り歩いていただけなので、電話があったこと自体は別になんの問題もない。
問題は、電話の内容だ。
携帯の着信番号を見たとき、何処の電話番号か分からずに躊躇したが、すぐに自分のアパートの固定電話だと気付き、ドキリとした。
藍からの始めてのコールが嬉しくてドキリとしたのなら目出度いが、今朝出掛けに藍が『子猫が元気がない』と心配そうにしていたのを思い出して、『もしや』と悪い予感が胸を過ぎったのだ。
「もしもし、藍ちゃん?」
「……はい。あの、お仕事中にすみません」
案の定。
藍の声音は、電話越しなのを割り引いても、妙に低く覇気が無い。
悪い予感が現実味を帯びていく。



