蒼いラビリンス~眠り姫に優しいキスを~


居間の前を通りかかると、灯りが漏れていて何やら中で人の話し声が聞こえて来たので、藍は『お水を頂きます』と声を掛けようと、顔を覗かせた。


部屋の中には、美奈と君恵。それに眠っていたはずの恵も起きていて、コタツを囲んでいた。


「あ、藍ちゃんだ♪」


恵が熊さん模様のピンクのパジャマ姿で、とてとてと嬉しそうに藍の元へ駆け寄った。


「あら、藍ちゃん。起こしちゃった? ゴメンね夜中に騒がしくして」


「あ、いいえ。喉が渇いたので、お水を頂こうかなと思って来たんですけど……あの、何かあったんですか?」


申し訳なさそうに言う君恵に、藍はぶんぶんと首を振ってから、疑問を質問に変えた。


「あのね、ちゃーちゃんが、赤ちゃん生むの! こっち、こっち」


「え?」


恵に手を引かれて、藍は皆の居るコタツの方へ足を向ける。


すると、いつも猫たちが寝ている場所にミカン箱大の段ボール箱が置かれていて、その中に佐藤家の飼い猫の二匹のうちの茶トラの雌、『ちゃー』が入って居るのが見えた。