車で杉浦の家へと男は向かう。

ピンポーン。
杉浦の自宅へ到着し、震える手でチャイムをならす。

杉浦(入れ。)

そう声が聞こえるとオートロックのガラス扉は開け放たれ、男は杉浦の部屋へとあがりこむ。

男(す…杉浦さん、ケータイ。)

そう言い、杉浦にケータイを渡すと男は動揺しながら言う。


男(も…ももも、もう、こんな…こんなことは出来ない…)

そう杉浦に告げると杉浦は男のいる壁の方へと詰め寄る。

男(む、無理だ…無茶苦茶だ。こんなこと…む、無茶苦茶すぎる…)

杉浦は男の髪をグッと掴み、壁に頭を押し付ける。

杉浦(お前…今何て言った?もう一回いってみろ。)

男(も、もう…も、もうできません。む、無理ですよ…ひ、ひとごろしなんか…)

杉浦の目を避けるかのように男は横へと顔を背けた。
杉浦は髪の毛を掴み、壁にもう一度男の頭をぶつけて言う。

杉浦(ゴミ同然のお前を拾ってやって、運転手だけでここまでの生活ができるのは誰のお陰だと思ってんだ?なぁ、矢野?お前、いつの間にそんな偉い口が聞けるようになったんだ。)

男(ご…ごごご…ごめんなさい。)

杉浦はもう片方の腕で男の顔横の壁を殴る。

男(ひ、ひぃぃ…)

杉浦(ケータイをよこせ。)

男(は…はい…)

そう言い、ポケットからケータイを取り出し杉浦に渡した。