明後日は一瞬のように訪れる。たとえ、歩が時の流れを止めようとしても濁流に飲まれるが如く、決行日は訪れた。

その晩、仕事を休んだ歩はリビングにいた。
オカメと斉藤は相変わらずの様子だ。まだ、これから何が起こるのかなど、二人が想像できる訳がなかった。

斉藤(あー寿司でも頼むか)

オカメ(…そうだね)

そんな二人が会話をしている姿をみながら歩は上の空で杉浦の言った言葉を呪文のようにループさせる。

…俺の言った通りにするんだ。誰にも見られるんじゃないぞ。跡形もなく全てを捨てろ。

何度も頭を駆け巡る中、歩は考える。

オカメは、どうすればよいのだろうか。
夜中の三時まであと五時間…その間どこかにオカメをどう移動させるかが問題だった。

そんな歩を差し置いて、斉藤はオカメに命令をする。

斉藤(おい、オカメ!寿司注文しろ。)

オカメ(はい!)

そう返事をすると、歩が間に割って入る。

歩(あ、オカメちゃん。あたしがやるよ。たまには座ってなよ…)

そうそっけなく言う歩に斉藤が突っ込む。

斉藤(お?どうした歩。珍しいじゃねーか。)

歩(ま、まぁね。仕事柄、人に気使うことになれちゃって。だから、きっとそう感じるだけよ。あたしがやるから…さ?オカメちゃんと斉藤さんは今日は座ってて。)

そう言い、キッチンの側にある電話機で寿司を注文する。
そして、気を紛らわすために冷たいお茶を歩は一気に飲み干した。