歩は一人、部屋の中で杉浦に嘘をつきながら、一方で米村に嘘をつく自分に混乱していた。

この嘘をお許しください…
そんな風に歩は、心の中で祈った。

そんな歩の事情など関係なしに、米村と杉浦の裏での駆け引きは止まる事はなかった。

そんな頃、杉浦の電話に米村をつけていた男から電話が入った。

プルルル…

杉浦(もしもし)

男(もしもし、例の男どうも薬の取引の件を嗅ぎ付けてるみたいです。)

杉浦(そうか。わかった。)

そう言って杉浦は電話を切り、歩に電話をかけた。

プルルル…

歩のケータイが部屋で鳴り始めた。

歩(あ、杉浦さんから電話だ…)

躊躇しながらも歩は電話にでる。

歩(もしもし…)

杉浦(もしもし、しばらく会えなくなるかもしれない。)

唐突にそんな切り出しをする杉浦に歩は慌てて問いかけた。

歩(どうして…?何があったの?)

杉浦(色々とまずいことが起こった。また電話する。)

歩は何が起こったのかわからないまま、一人不安な気持ちにかられた。

…一体杉浦さんの身に何があったんだろう。
自分のビジネスが順調に進むなか、杉浦の事が頭から離れずにいた。