春が訪れようとしている日に、私の心にはいつも雨が降る。
空はあんなに雲ひとつなく晴れて、外を見渡せば桜の花が満開に咲いているのに私の心は咲くことさえも忘れたような…そう、あれは四月のあの日のことだった。全てが始まって全てが終わりを告げたのは…。



ゴホッ

ゴホッ

激しい熱と咳でぐったりと横になっている歩がいる。
三月の終わりに、風邪をこじらせて、ふらつきながら病院へ向かっていた。
幸い自宅から近い病院だったので、なんとかギリギリの体力を維持して病院へとたどり着いた。

医者(インフルエンザですね。ほら。)

そう言って、先ほど鼻の穴に突っ込まれた綿棒から採取されたウィルスが陽性であることを見せる。

医者(お薬出しておくので、お大事に。)

そう言われ、ふらつく体をなんとか支えながら自宅に帰りついた。
体から油汗がでるのでベッドにたおれこむ。

歩は深くため息をつく。
そして、真っ白い天井を見つめてはぼーっと考えて涙を流す。