淡い桃色の浴衣。
笑顔で、鼻歌までも歌いながらお母さんはぽつりぽつりと話し始めた。
「この浴衣ね、お母さんが初めてお父さんと会った日に着てたものなの」
「え?」
「お母さんとお父さんはね、花火大会で出会ったのよ」
「そうなのっ?」
帯をぎゅうっとしめられ、少しお腹が苦しくなる。
「そうよ。お母さん、お父さんにナンパされてね。最初は嫌々だったんだけど、いつの間にかお父さんと話してるのが楽しくなってきてね」
「出会いって、ナンパだったの…」
娘からすると、なんだか複雑な気分になる。
でもお母さんが懐かしそうに、まるで昔に戻ってるように楽しそうに話すからあたしは黙って耳を傾けることにした。
「最初はね、まさかお父さんと結婚するなんて思ってもなかったの。…でもね、思い返してみると傍にいてくれたのはいつだってお父さんだった…。神様ってほんと意地悪よね。お母さんの宝物が新しくできたら、もう一つの宝物を失くしちゃうんだもの」
…たぶん。たぶん、宝物っていうのはお父さんとあたしだと思う。
あたしが生まれた代わりに、お父さんが死んでしまった…。
「…でも、いつまでもくよくよしてられないわよね。林檎がいなかったらお母さん今頃お父さんのこと追って自殺してたわよ、きっと」
くすくすと笑うお母さん。
…うーん。お母さんならありえそうで怖い…。

