月 —Moon—




「着きましたよ。」




徹也の声で考えるのをやめた。




「…ありがと。」




あたしは車を降りて家の中へと入る。





「はぁ、親父になんて言うんだよ、俺殺されんじゃねぇ?」




皐月はダルそうに廊下を歩く。




念押しされてたもんね。




「皐月、伊世。」





きっと今、皐月が一番聞きたくない声だろう人の声が聞こえた。





「…。」




あたしは無言。