月 —Moon—




胸元にいれた刺青。



翼。



自由に、という意味を込めて、だとか言ってたっけ?




「……朔夜…。」



「大丈夫ですか?伊世さん。」



無意識に名前を呟いていたみたいだった。



隣を歩いている徹也が心配そうにこっちを見ていた。



「大丈夫だよ。」




ぎゅっとネックレスを握りしめて、そう答えたあたし。



「……そうですか。」



徹也は、それ以上何も聞いてこなかった。