お姫様と若頭様。【完】



「…そんな彼をね、
彩狼の皆が止めてくれたの。



彼を抑えて、これ以上女を悲しませんな
って言ってくれて…。




それから私、頑張って少しでも強くなろうと思った。


彩狼に憧れたの。


それから、
彩狼の傘下の総長になったってわけ。


まぁ。簡単に言えばそんなとこだよ。



彩狼は、私の恩人。



…だから、私はあんたも救ってくれると
信じてるよ。



……私を…彩狼を、信じて欲しい」




本当は裏切られるのが怖いって言うのが
ずっと心の中に残っていた。


中学の頃、親友だと思っていた子に
彼氏を盗られた。


…彼を好きだって言ってくれたら、
どれほど楽だったろうに。


だけど、
現実はそう思うように行かない。


彼は私じゃなく彼女を選んだ。


だけど彼女は彼を選ばなかった。


理由は簡単。
私のことがウザいから。

私に見せつけて自分だけ満足するために
彼を盗った。



私はもう、正直誰を信じたら良いのか
わからなくなってしまった。


誰を選んでも裏切られてしまいそうで、
人と線を引くことでしか接することが出来なくなった。




でもあの時の原因は
彼の心を引きとめられなかった、
彼女を追い詰めた、
私の所為。








「……廻坂さんは、強いね」


私なんて、逃げてばっかりで。


あの時裏切られたのが怖くて、
自ら逃げ出した。

周りが悪いって決めつけて、
自分の罪に目を瞑ったの。


強くなる努力もしなかった。



彼女と私の違いは、
逃げたか、逃げなかったか。


あの時の選択を間違えたことは、
私が一番理解している。