お姫様と若頭様。【完】





だけど、その時感じた温もり。



驚いてパッと目を開けると、
私に抱きつく廻坂さん。


その肩は少しだけ
震えているようだった。










「……辛かったろ」



うん、辛かったよ。


自分を誤魔化す毎日だった。


どうしても、いじめられていると理解したくなかった。

私なんてこの世に必要ないと言われているみたいで。


家族にだって、
絶対知られたくなかった。

迷惑をかけることが、何より辛かった。





ただ泣いたら負けだと思って、
今まで涙は流さなかった。


どんな罵声を浴びせられても、
暴力を加えられても。






だけど久々に感じた人の温もりに、
妙に感動してしまう自分がいた。













頬に一粒だけ、
涙が流れた。