「英捺…どうした?」
私の表情を伺うように見る廻坂さん。
私のことを呼んでくれるのはこの学校できっと彼女だけ。
「…なんでもない…です……」
なんでもない、そう思えばいい。
そう思えば、全てが丸く収まる。
だけどやはり彼女の洞察力は凄かった。
私が窓の外を覗く時に置いたカバンへ近づくと、そこで何かに気づいたのか窓に手をかけた。
「あっ…ダメッ……!」
だけどこの中で一番、彼女にこのことを知られたくないのは自分自身で。
いじめられている私なんかともう話したくないと思われるのが怖かった。
そのまま、無言の時間が進んだ。
皆も黙ったまま、
彼女が口を開くのを待った。
「…んだ、コレ……」
嫌だ、嫌だ、嫌だ…ッ!
ギュッと目を閉じた。


