それでもあの日のことがトラウマとなり
抵抗して乱暴されたら…。
そう思うと彼について行く他なかった。
歩いていてふと気づいたこと。
まだ帰る生徒のまばらにいるこの時間。
女子は彼を見てキャーキャー騒いではいるものの、一切近寄ろうとはしない。
近寄ってはいけないルールでもあるのだろうか?
確かによく見るとこの人は美形だ。
それもかなりの。
眼鏡も勿論素敵だけれど、外した顔はさぞかし並外れたものだろう。
と、そんなことを考えてる間に辿り着いたのは…何この車。
あっ、
パパのお友達がよく使う車に似てる。
フルスモークの真っ黒の車。
なんだか雰囲気のある車。
あの日の光景を思い出し、もしこの中にたくさん男の人がいたら…と思うと足が竦まずにはいられなかった。
それでも彼が私に乗れという視線を送って来るものだから、
やはり乗るしかなくて…。
だけど、実際入ってみると男の人は運転手と彼だけで、彼が何もしない限りそんなことは起こらない状況だ。
ホッと胸をなでおろし、
肩の力を抜いた。
車内は本当に静かだ。
聞こえるのは車の走る音だけ。
本当に息遣いまで聞こえてしまいそうなほど静かな車内。
気まずさは少しあるけれど、彼はなにやらメールを打ってばかりだし、運転手さんはずっと前を見据えたままだ。
そな状況だからか、それともあの日以来あまり眠れていないからか、
私は少しだけ、浅い眠りに落ちたーー。


