…いつからこの状況になっていたのか、私の頭はパニック状態だった。
男たち数人を、まるで赤子の手を捻るが如く瞬殺してしまった。
彼の力はそれほど圧倒的で、あんなに殺気立っていた男たちはいとも簡単に地面に伏せられていた。
でも彼の強さ以上に驚いたのは、戦う時の姿。
私の憧れるあの人とは全く違う姿なものの、根本的に似ていた。
本当に、綺麗に戦う人だと思った。
力強い拳と、鋭い蹴り。
相手の攻撃を態とスレスレで避けるほど余裕がある見事な反射神経。
相手の攻撃を体に一切受けることなく圧勝してしまった彼。
何も言葉は出なかった。
「…怪我ないか?」
しかし彼の綺麗な声で我に返った。
「あ、えっと、はい。
本当にありがとうございました。
お陰で何もされずに済みました。
…あの、お礼…をよかったらさせていただきたいのですが…」
「…礼はいい」
謙虚なところも、あの人に似ている。
余計に彼を知りたくなってしまった。


