掴まれている手の拳を強く握り、
目をギュッと瞑ったその時だった。



















ードサッ












目の前にいた人が突然、消えた。



腕の解放される感覚と共に。












この場にいる全員が
"ソレ"に視線を向けた。



そこには艶やかに靡かせた髪と、
この世のものとは思えないほどの美貌。
男たちより遥かに高い背。







けどなにより背筋を凍らせたのは、
彼の冷た過ぎるほどの瞳。






私はその日、その瞬間、
彼に強く魅せられてしまった。



それと同時に、初めてあの人以外に、
彼に"憧れ"を抱いた。