お姫様と若頭様。【完】






「「「「きゃー!」」」」


大きな悲鳴。

驚いて振り返るけど人だかりが見えるだけでその根源はわからない。


「あ!見て、ゆず。
あの人たちが彩狼だよ」


そう言われてもう1度見るけど
やはり見えないまま。



でもなぜか一瞬にして
人が道を作った。



その中心で背が高いのか顔が見えた。



「あっ…」


ザワザワする。

なんか胸が掻きむしりたくなる衝動に駆られて…制服をぎゅっと掴んだ。



「そっか、
今日は生徒会活動するからだね。

皆さん生徒会メンバーだし」


生徒会メンバー…。

もっと胸がざわつく。



なんとなく、凱瑠が教えてくれなかった理由はこれなんだとわかった。



「…はっ…はぁっ……」


頭が…痛い。

呼吸が出来ない。


息を深く吸おうとしても
漏れて来るのは小さな息だけ。


…過呼吸…だよね?


でも…頭が割れるように痛い。

呼吸なんて気にしていられないほどに。


頭を金槌で打たれたような衝撃と
それによって催される吐き気。



こんなところで…皆がいる前で
そんな醜態晒したくない。



「ごめん、ちょっとお手洗い…」


「えっ?ちょ、ゆず!!」


アラレちゃんの声が聞こえたけど
全速力で走った。










走り去る前、
漆黒の瞳と目があった気がした。