「お嬢様…」


そう私を呼ぶ彼の声は
今にも泣きそうで、

余計私を悲しくさせた。



「絶対にこのことは誰にも言わないで。


…彼にも絶対言わないで。


彼以外の人に触れられそうになっていた
なんて知られたら失望させてしまう。



あの人が私のことをそう言う目でしか
見てないのはわかっているの。


今日だって私に触れられなかったから
あんなに怒っていたのね…。


…それとも、私が"お人形"のように
口答えしなければ彼の本望かしら?」



私が冷たく"お人形"と言うと、
夕梛はピクリと肩を揺らした。


夕梛も過去に闇を抱えた一人。



誰よりも彼は"人形"というものを
恐れている。


夕梛の過去に触れて、夕梛は壊れて…。



あんな夕梛はもう2度と見たくない。