「楪」






夕梛がいなくなったことで
再び私を呼ぶ彼。





……夕梛、
早く戻って来て…!





「楪」



「はい、奇十院様」



「萊翔ーRaitoーって呼んでよ、楪」



「そんな恐れ多い…「命令」


"命令"



その言葉にビクッと肩が上がる。



命令…それは逆らえない。




「萊翔様…」




そう呼ぶと彼はフッと笑って
近づいて来た。



「また綺麗になったね、楪」



見ない間に、そう付け加えた彼とは
会うのは約半年振り。


ヨルと付き合う前だった。


彼は留学で海外に飛んでいて
日本に戻って来るのも半年振りだ。



「ありがとうございます、萊翔様」




「俺がいない間、
良い子にして待ってた?」


「はい…萊翔様。

お会いするのを
心待ちにしておりました」




その私の返事に満足そうに笑った後、
彼はベッドに押し倒した。




「萊翔様…お茶を頂いてからに
致しましょう」


「なに、楪。

俺に意見するの?」


「すみません」


急に声音を下げて怒る彼。



彼に逆らうとどうなるか…。




私はそれを身を持って体験している。




「楪…男、出来てないよね」


聞く、というより
当たり前のように言う彼。


私が男…彼氏を作ることを許さない、
とでも言うように。



「はい、萊翔様」



「この身体も…誰にも触らせてない?」


「はい、萊翔様」



なぜここまで束縛をするのか、
それが私には分からない…。






私なんて、なんの魅力もないでしょう?