俺の言い訳なんて、姉に届くはずもなく。

仕方がないので事情を説明するため、姉についてリビングへと足を向けた。

不安そうな彼女に『大丈夫』という意味を込めて俺は笑った。

その俺の顔を、嬉しそうに見つめる彼女。


俺が笑った瞬間に姉と義兄さんが同時に息を呑み、そして目を合わせる。

言いたいことがあるなら聞いてやる、という好戦的な視線を、俺は二人に向けていた。




結局、事の顛末を洗いざらい姉に話すこととなり。

姉からは『ケダモノ』と『父親失格』のレッテルを貼られてしまい。

義兄さんからは『女の連れ込み禁止違反』として、同情の眼差しを向けられてしまった。


二人とも水鳥嬢に興味津々で、申し訳ないので帰ると言った彼女を無理矢理引き留めた。

質問攻めにされる彼女は素のままの彼女で、とてつもなく姉とウマが合うようだった。

考えてみれば当たり前のことで。

姉も彼女と同じような経験を潜り抜けてきた人種なのだ、と再確認をした。


姉は彼女のことをよく理解し、彼女へのアドバイスも的確だった。

義兄さんは、そんな二人の様子を微笑ましく見守っていた。



彼女に嫉妬した姪を宥めるために、俺は一日中、姪をあやし続けることになってしまったが、まぁ仕方がない。

すっかりと姉夫婦と意気投合している彼女は、今までで一番自然体である様な気がしていた。




こうして俺の『水鳥嬢、連れ込み事件』は幕を閉じた。

お互いに素を曝け出した俺達は、仕事仲間という枠を超えた相棒になった。

これから先も、彼女はプライベートの顔でこの家に訪れることは間違いないだろう。



別の会社にいても彼女を育てることは出来る。

そんな風に水鳥嬢を見守っていくことを、俺はこの日に決意したのだった。