「なんで……」
「一度吸ったら、やめるのキツイから」
「知ってる。吸ってたし」
「なら、分かってんだろ」


煙草をやめる辛さは、身を以て知っている。


だけどこうやって目の前で、煙草を頻繁に吹かされて、
煙草の味がするキスを何度もされたら、吸いたくなるのは当たり前で……。


「拓ばっかりズルイ」

「吸いたくなったら言え。
 その分、キスしてやるから」


そう言って、再び重ねてくるキス。


「んっ……副流煙のほうが体に悪いんだよ」

「……なら、俺もやめるしかねぇか」



キスの合間を縫って漏らした言葉に、予想外の返事。


いったい、どうして彼は、あたしが煙草を吸うことを拒むのか……。



「拓……?」

「お前は、いつかのときのために、煙草は吸うな」

「……」



その言葉の意味を理解するのに

3秒かかった。