こんな男の、思い通りになるなんて腹が立つ。

偽りの自分を捨てるとか、この会社では絶対にないと思ってた。



だけどもうすでに
平穏の生活を送れるほど、何もない日常がこの先待っているわけではない。


この男のせいで、
誰の目にも触れられず、淡々と仕事をするだけではいかなくなったから……。


「地味女」


そんな言葉を吐く女たちなんて、気にしてないけど……


「これ、お願いね」


と勝手に押し付けてくる仕事には、嫌気がさす。


それならもう、誰も文句の言えない立場になってやろう。

納得のいく女になってやろう。



「……」


眼鏡を置き、ヘアゴムをといた。