それでも僕は君を離さない

彼女は純真で勤勉で常に周りを気遣った。

それも控えめにだ。

そんなことができる女は今まで見たこともなかった。

以前こんなことを言っていた。

自分が言ったひと言に相手がどう反応するのかがわかるから

怖くて何も言えない。

それが悩みだと言っていた。

俺は彼女を離さなかった。

片時もだ。

常に視野に入れておいた。

つまり俺は彼女に首ったけだった。

それにもかかわらず俺の想いは伝えていなかった。

伝えたら最後

彼女は俺の前から姿を消すだろうとわかっていた。

卒業と就活を乗り越えなければ

彼女と向き合う時

スタートラインにも立てていないことになると考え

俺はかなり落ち込んでいた。