それでも僕は君を離さない

俺は笹尾忍。

右隣に座った奈々の動揺が手に取るようにわかった。

彼女は俺と目を合わせようとしなかった。

その向こうに坂下が座っていた。

彼は昨日ラボのオフィスにいた。

奈々は坂下とも目を合わせようとしなかった。

2人の間には何かあると直感でわかった。

俺は奈々が大学を卒業した後

大学院の研究室にこもって研究に没頭し

卒論を完璧に仕上げた。

彼女とは1年以上会っていなかった。

この会社に彼女がいたのは運命としか思えなかった。

理系の俺でも科学的かつ論理的な説明がつかないことにも

少なくとも関心はある。