それでも僕は君を離さない

僕は廊下に出て地下の駐車場へ向かった。

リーダー笹尾は女を寄せ付けない雰囲気と

繊細な思考を好む理系独特のオーラを今は控えめに漂わせていた。

何を考えているのかを他人に気づかれないよう表情やしぐさを消していた。

彼が奈々を選んだ理由が知りたかった。

単なる性的欲求のハケ口だったのだろうか?

それとも僕と同じ想いがあったからか?

もしそうだとしたら一番あってほしくない展開が待ち受けることになると予想できた。

それは奈々を奪われることだ。

彼はどうやって奈々を振り向かせるのか?

それを見ていたい気持ちもあった。

なぜなら肝心の奈々が僕にも彼にも興味薄な部分に

この先僕が彼女にどう接していったら

僕にとっていい方向が見えることになるのか

全く考えつかないでいたからだ。

僕は彼女にメールした。

『しばらく距離をおこうと思う。透吾』

彼女からの返信はなかった。

それは僕が彼女を追い込んだストレスの重さに

彼女が耐えられていないことを意味していた。