ひだまりに恋して。

村本先輩と別れて、自分の教室に入ろうとしたとき。

思い切り手を引かれて、私は廊下で転びかける。



「分からないやつだな。」



そう言って私を睨みつけるのは、この間、瑞紀と呼ばれていた女の先輩だ。

取り巻きも、私をキッと睨みつけている。



「この間の警告、無視したってことでいい?」



何も言えない。

そうだ。

私は警告されながらも、今朝は堂々と村本先輩と登校してしまった。

自業自得だなって思う。



「今日の放課後、五階の廊下に来いよ。……来なかったら、もう学校来れないようにしてやるから。」



そう低い声で言うと、彼女たちは去って行く。

そして振り返って、思い出したように、誰にも言うなよ、と凄む。


私は、俯くしかなかった。

こんなことになったのは、全部自分のせいだ。

だから、自分で何とかしなきゃどうしようもない。



「どうしよう。」



一瞬、横内先生の顔が頭に浮かんだ。

だけど、先生にあんな顔をさせてしまった私が、こんなときだけ先生を頼るなんて許されない。

しかも、先輩とのことに巻き込むなんて。


それに、誰にも言うなと言われた以上。

誰かに助けを求めたことがバレた時点で、私は学校に来られないようにされるんだろう。


五階の廊下は、ほとんど人が来ない。

そんな場所を、偶然通りかかる人がいるはずもない。

私は今になって、とんでもないことになった、と自覚した。



「横内先生。」



小さくつぶやいて、私は机に突っ伏した。