「先生、そのまま。」


今日も私は、先生の横顔を撮る。

部室のなかは綺麗になったから、もうほこりが充満することもない。

でも私は、いつでも息を止めながら、先生の写真を撮っている。



「なあ、朝倉。」



ふいに振り返った先生の顔を、いつの間にか撮ってしまう。

私に話しかけようと口を開いた先生の顔は、なんだかセクシーに映っていて。

私ははっと息を呑んでしまう。



「カメラ貸して。」


「え?」


「いいから。」



カメラを先生に差し出すと、先生は確かめるようにカシャカシャと部品をいじった。



「へー、いいカメラだね。ちょっと古いな。」


「はい。」



答える声が掠れた。

カメラの話は、まだしないと決めていた。

身構える私の心を見透かしたように、先生は笑った。



「違う。お前を問い詰めるわけじゃないから安心しろ。朝倉、……ちょっと、こっち向いて。」



訝しげに先生を見つめると、カメラを構えた先生が、カシャとシャッターを切った。



「え、先生!」



抗議する私の声も無視して、カシャカシャと私を撮る。

しばらく抗議していたけれど、段々面白くなってきて、からからと笑った。

カメラを向ける先生と、撮られる私。

いつもと反対の私たちは、二人で何故か大笑いしながら、レンズを挟んで戯れた。


奇妙で、意味が分からなくて。

でも、確かに私たちは笑い合っていた。

お互いの傷に触れないように、かばい合いながら―――