鼻歌を歌いながら、職員室を目指す。

今日は金曜日。

約束の金曜日だ。


「失礼、しまーす。」


職員室に入ったけれど、肝心の横内先生はいなかった。

その席は、ぽっかりと空いている。


「あれ?横内先生……。」


約束を忘れたわけじゃないよね。

一応、私の被写体になってくれたはずだよね。

金曜日の放課後だけだぞって。


先生の机を覗き込むと、何やらメモが置いてある。


―――部室にいる。


そのメモを見て、私の頬は緩む。

なーんだあ、やっぱり。


トコトコと部室に向かって走り出す。

古いカメラを抱えて、私は楽しい気持ちでいっぱいで。

恋とか関係なかった。


ただ、あの横顔を。

切なくて、美しくて、どうしようもなく撮りたいと思った横顔を。

私だけのものにできるなら。


そう思って、部室を目指したのだった。