獅狼の言葉を無視して睨めば、握られている手に痛みが走った。




「いた…っ」




痛みに顔を歪め、一言文句を言ってやろうと獅狼の顔を見ればいつになく真剣な顔でわたしを見ていた。


…な、に…。




「おまえ…“夜”がどんだけ危ねぇか、わかってる?」


「…は?」




ドン、と近くにあったフェンスに押し付けられわたしの足の間に獅狼が片足を入れ至近距離で見つめられる。


う、わ……。顔、ちかい…っ。


ドキンっ、一気に加速する鼓動。何でこんな状況になっているのかわからず、ただ顔を赤くさせて視線をさまよわせるしかないわたし。




「こういう状況になったらおまえ…どうやって逃げんの?」


「…え」


「わかってんだろ。男と女の力の差くらい」


「………」