「どした?顔真っ赤だけど」
「う、うっさい!何でもない!!」
くるっと獅狼に背中を向けて手の甲で口元を隠した。
勝手に、獅狼を意識してる自分がいる。それがなんでなのかわたしにはわからないから、モヤモヤする…。
「さて、そろそろ戻るか」
「え…」
「あんま長居すると大の方だって思われるからな」
バカッ!、と獅郎の頭めがけてグーパンチをすれば「いって〜この馬鹿力!」なんて言ってくる。
少しでも獅狼にトキメいた自分がばかだったよ!
でも獅狼はクスクスと笑いながらまた暑苦しい黒髪のウィッグを付け直し、ため息をついた。
「この格好も、だるいなぁ」
「…やめればいいじゃん」
「ばーか。寧々に怒られるっつーの」
ほら行くぞ、と笑う。
…ばかみたいにドキドキと、脈打つ心臓にわたしもため息が出そうになった。

