「わ…獅狼だ……」




黒髪のウィッグを取った獅狼をまじまじと見つめながらそう言った。




「は?何言ってんだおまえ」




暑さで頭もヤラれたか、とバカにされ少しムッとする。


さっきの優しい獅狼はどこ行っちゃったんだか。優しい獅郎、すぐどっか行っちゃうじゃん。




「…つーかおまえさ、」


「?」




獅狼は小さく笑って前髪をかきあげた。


そんな仕草もサマになってて、思わず見惚れた。




「ぼーっとしすぎだろ」


「…え?」


「えっじゃねぇよ。おまえがぼーっとしてっからみんな余計に心配すんだろ」


「………」




そう言われて思い返してみれば、確かにみんなの話聞いてなかったし、ただただ違うところばっかり見てたっけ…。


まさかそんなところまで見られてるなんて…。




「いつもみたいにバカでうるさいオタクなおまえでいろよ」




ニッと意地悪な笑みを浮かべて、わたしの頭を撫でる獅狼。




「じゃねーとみんな調子狂うだろ」




心臓が大きく波打って、顔が火照っていくのがわかった。


…な、何だこれ…。ワケわかんない…。


絶対貶されたはずなのに、獅郎の行動にどきどきしてる自分が意味わかんない…。