獅狼は何も言わず頷くと、宿に入っていってしまった。
「林堂くんってさぁ、あんま喋んないよね」
「まぁでもここまでリリちゃんを連れてきてくれる優しさはあるっぽいな」
「………」
喋んなくても、わかった。ふたりにはわからないように少しだけニヤッと笑ってた。
ちょっと意地悪だけど、なんだかんだ言っていつも優しくしてくれる獅狼。
まだほんの少ししか知らないけれど、唯一わたしが知ってる獅狼の本性。それだけなのに、なんだか嬉しく思えた。
「リリ?どうしたのニヤニヤしちゃって」
「ううん、なんでもない!」
「それより早く先生にケガしたところ見てもらった方がいいね」
ふたりに肩を貸してもらって宿の中へと入った。

