「うっさい!獅狼の手なんか借りなくてもひとりでっ…───」
歩けるもんね!、と続くハズの言葉は消え視界が、ぐらりと揺らいだ。
やばい転ける…!!、反射的にぎゅっと目をつむり来るであろう衝撃に体を強ばらせた。
……けれど来るはずの痛みはいっこうに感じられず、それどころか柔らかくて暖かいものに包まれているように感じた。
うっすらと目を開くと目の前にはうちの学校の体操服。胸元のあたりには「林堂」の文字。
「しっ、獅狼…」
「…ったくお前は本当に危なっかしい奴だな」
勢いよく顔を上げればそこには少し焦り顔の獅狼がいた。
ああ、なんかまた獅狼に助けられちゃったな……。そう思っていると、獅狼は口角を上げてニヤッと笑った。
「誰の手を借りなくてもいいって?」
「……ずみまぜんでじた…」
獅狼に鼻を抓まれて濁点だらけの謝罪を述べた。
「うむよろしい」と満足気に笑うとゆっくりとわたしを立たせてくれた。

