わたしと同じ目線になった獅狼の顔は今まで見てきた中で一番、焦った顔をしていた。
なんで…そんなに焦って…。
「待ってろ、今先生に…っ」
そう言って立ち上がろうとした獅狼の腕を掴んで、わたしは「いい」と言った。
だれにも、心配させたくないの。
「いいって…、おまえその足でどうやって下まで行くんだよ?宿につくまでまだ距離あるんだぞ?」
「わかってる。…遅くなってもいいからがんばって歩くよ。獅狼は先に行っていいよ」
わたしに構わなくていいから、と目尻を下げて笑うと獅狼は急に目つきを変えて「ふざけんな」と少し大きめの声で言った。
「誰が、怪我人置いて先に行くんだよ。何で、痛いくせにそうやって笑うんだよ」
「獅狼…」
獅狼はわたしの顔を両手で挟むと眉を潜め、自分が怪我をしているかのような苦しそうな表情をする。
…どうしてそんな顔をするの?

