「きゃっ」


「うお、大丈夫か?」




目の前にいたえりが足を滑らせて転けそうになったところを、松原がえりの腕をつかんでなんとか尻餅をつかずにすんだ。




「えり、大丈夫?」


「う、うん…。それにしてもほんと足場悪いよね…」




えりの肩をポンと叩いて顔を覗き込むと少しだけ青ざめていた。


それもそうだよね。横を見れば崖。こんなところで滑って落ちました、じゃ怪我だけじゃ済まない。




「はぁ〜。行きはあんなに楽しかったのになぁ〜」


「そうかな?わたしは息も絶え絶えだったけど」


「リリはね。私は楽しかったのっ」


「ええ〜?これのどこが楽しいの?」




ただ山登って下って。頂上の景色は確かによかったけれど、それ以外はわたしにとって苦痛でしかない。


ゲームはできないし、疲れるし、虫は多いし。何も面白くない。登山するくらいなら明日の海の方がよっぽど楽しい。


テストの結果がよければ、だけど。