あたしの好きなモノ。 いちごのタルト、アンティークなブローチ。 子猫に、プチトマト。 自分で言うのもなんだけど、どこにでもいる平凡な女子高生だ。 「茂木――!」 教室の外から呼ばれた名前に、ドキリと反応するあたしの胸。 でも、もちろん“茂木”っていうのはあたしの名前じゃなくて。 「おーなに?」 聞こえたのは耳をくすぐる、心地よい低い声。 目線の先で、ゆるいパーマのかかった茶髪が揺れた。