「忘れたっていうか……」 「ごめん、そんな簡単には忘れられないよな……」 「あ、いやそうじゃなくて、」 そっと深高くんの手をつかむと 少しだけびっくりした顔があたしを見た。 「まだ完全に忘れたわけじゃないし、たまに胸が痛いこともある。でも、考えることがあんまりなかったかなって」 「え?」 「一緒にいてくれて、あたしのこと 考えてくれてたから。その……深高くんが」 今なら茂木くんを見ても、少し胸は 痛むけど、平気になっていたんだ。 少しずつ、前に進めている気がする。