「おいちょっと待てよ。そこに兼子がいるって?」


「だからそう言ってんだろ……ッ」



突然伸びてきた手に胸ぐらを掴まれ、俺は思わず携帯を手放した。


カツン、と乾いた音をたててコンクリートの地面に堕ちる。

まだ通話中だった携帯から、レージの慌てたような声が聞こえてきていた。


「お前が」


俺の胸ぐらを掴んだまま、兼子先生はしぼりだしたような低い声で言った。

じりじりと後退させられる。