「……家族、遠いんだ。寂しい?」
「いや、たまに悠兄から電話来るしするし。寂しくはないって。雪村君は……」
雪村君はどうなんだ?
と言おうとして、俺は慌てて口をふさいだ。
あんな父親持ってるんだ。
つらいに決まってる。
けれど、返ってきた応えは意外にもそんなんではなくて。
「オレ?別に普通…だよ。お父さんも、いい人だし。……お酒が好きで、たまに酔って殴ってくるけど、そのあと、必ず謝ってくれるから。あと、いろんなところに連れてってくれるし。
前に…オレは薄情者だって言われたけど、お父さんはいい人だよ」
その言葉は、自分を納得させるような響きはなく、本心からの言葉だった。


