休むと学校へ連絡したとき、出てきたのはいつもの事務員ではなく兼子先生だった。


驚いたが、とにかく休みを伝えると「そうか」といつもの変わらない声で返してくれた。


教師をやめずにあんなことがあった翌日も真面目に出勤してるようだ。

社会人だからとうぜんなのかもしれないが、少しだけ嬉しかったのを覚えてる。

それから、電話を切ろうとしたとき。


「ああ北見、ちょっと待ってくれ」

「?」

布団を頭から被った体勢のまま、俺は動きを止める。

兼子先生はなぜか声をひそめて短く次の言葉を言った。


「ありがとう」