気づけば俺は雪村君をぶん殴っていた。

大きな騒音をたてて、彼の痩躯が壁に叩きつけられる。

殴った拳に痺れるような痛みが走った。


「…その台詞を、お前は本人の前で言えるのかよ」


「………」

彼は答えない。

でもきっと、彼なら言えるだろう。

死を目の前にした先輩の前で、顔色ひとつ変えずに。


「先輩の想いを受け入れろとか、付き合えなんて言わないけど、でも、何か言ってやることはできただろ!?」