俺は妙な居心地の悪さを感じた。


礼を言われるようなことも、謝れるようなこともしてない。

むしろ俺たちがしたのは、暴かなくてもいい秘密を暴いてしまった下世話な行為だ。

そしてその秘密を暴くことで、橘先輩と兼子先生のことを傷つけてしまったのかもしれないのに。



「……俺は、先生を警察にやったりしないし、橘先輩のことをみんなに公表するつもりもないです」


兼子先生はしばらく悔やむように目を伏していたが、「……すまない」とだけ言い残した。