ギリッと歯噛みする先生。
握りしめた拳から、赤い液体が流れ出る。
「俺は止めようとしたさ!考え直せと!そんなことですべて諦めるなと!!でも橘はまったく聞いてくれなくて、なぜか晴れ晴れした笑顔で堕ちていこうとした…。
俺はあせって橘を掴もうとして、そしたらなにをどう間違えたのか、俺の手は橘の肩を押してしまった…。
俺が橘を、堕としたんだ」
「違います!先生は助けようとした!殺してない!事故だったんだ!!」
俺は思わず叫んだ。
自分を責める兼子先生の姿が、あのときの悠兄に重なって、居たたまれなくなったのだ。


