「ちがう……私は、殺してない……」


そう言う兼子先生は震えていた。


屋上の縁を見たかと思うと、とたんに怯えたように「ひぃ…!」と情けない声をあげて後ずさる。


彼にはなにが見えてるのだろう。

幽霊や迷信なんて信じない方だけど、もしかして橘先輩の霊でもいるのかもしれない。


「……ちがう…ちがうんだ。私は、わざとじゃない…あれは…事故だ。私は殺してない……橘は自殺だったんだ!」


殺してない…自殺…事故……。


もしかして…。