「私と…お友達になりませんか!」
杏里ちゃんが私の手をぎゅう、と
握って 太陽みたいに パアッと笑った
『友達?』 「へえ、友達どす!」
友達、と言う言葉にじんわりと
胸が熱くなる
私はまだ町にいた頃
あまり人が好きではなくて いつも
自分1人で遊んでいた 話相手だって
両親ぐらいしかいなかった。
だから、友達なんて言葉
口に出したことすら 子供時代には
なかった。 今思うと 少し
苦い思い出だ。
『いいよ』 「やったあ‼︎」
するりと、自然に口から溢れた。
あぁ 私友達が欲しかったんだ、と
いまさらながら思った。
「私 島原にたくさん知り合いが居るから役に立てると思うんどす!よろしゅう
お願いしますー」
『そ、そう ありがとう』
友達、と意識してしまうと顔が熱く
なるので 目を逸して話題を変えよう
と 試みる。
『そういえば、何か話があるんだよね』
「あ、へえ 最近怪しい人たちが
島原でよく会合を開いとるって噂なん
どす」
『!』
怪しい連中が会合を開く、と言うは
何が起きてしまう ということことだ
それは 何とか阻止しなければならない
『わかった、ありがとうみんなに伝えておくね』
「…もし島原に行くつもりやったら
いつでも声かけておくれやす あそこには顔がききますから きっと力になれる思います」
うん、と頷いて 席を立ちながら
笑って言う
『桜餅、ありがとう…また こようね』
「へえ また。」
早く 幹部の連中に伝えなければ
と、私は浅葱色の羽織をひるがえし
屯所まで急いだ。

