総司が支度を済ませて 広間に行き
朝飯を食べると、みんなは巡察とか稽古とかで 広間には私と 総司の二人きりだった。


『暇だな…』

私が刀をいじりながら
ボソッとつぶやくと、総司が ニヤリと
黒い笑みを浮かべた



「ふぅん?…じゃあ 楽しいこと
しに行こうか」


スクッ と立ち上がり ルンルンと走る
総司を 興味深々で追いかける


すると総司は土方の部屋の前で
止まった。 襖を開けても土方の姿
は無かった


『何する気なの?楽しいことは?』


土方の文机の下を ゴソゴソと漁る
総司の若草色の袖を クイ、と引っ張る
と 総司は楽しそうに 一冊の本を
取り出して私に見せた


「これこれ」 『豊玉発句集…?』


句集?これのどこが楽しいのだろう。
パラリ、と開けて中を読む

『春の草 五色までは 覚えけり?』

また、パラリとめくると

『梅の花 一輪咲いても 梅は梅』

「どう…思う?」


総司は何故か笑いを堪えながら
聞くので う、うーん。 と首を傾げる


『なんというか…だから何?っていう感じ。ハッキリしてないと、思う。素人目からでも…あんまりかなぁ。むしろ…
ヘタ?』

「アハハッ…」

感想を述べると 総司が腹を抱えて
笑い出し、そして言った。


「それ、豊玉ってのは 土方さんの雅号だよ」


雅号?って言うことは…土方の句集⁉︎
私は句集を握りしめて盛大に吹き出した


『ぶ…っ あはッアハハッ…お、お腹…痛いッ…ちょ…梅…キャハハッ』


「ふふふっ、それもう全部 梅だよねー
面白いでしょ!」


『くっ…は…う、うん… 』

疼くまって 笑いに堪えていると
スッ、襖が開いた






「てめぇら…」


「あ」 『あ…』







「そこに直りやがれぇえええッッ‼︎」



土方の怒号が 空気を震わせた。

そこには盛大に青筋を額に浮かべた

鬼副長が 聳え立っていた。



うん…死…死んだな。 (笑)