土方side

「はあ…」

縁側で月を見上げながら斎藤と
酒を酌み交わしていたら 思わず
ため息がこぼれた。

「副長、どうされたのですか?」

斎藤のいつもは無表情の顔から
心配の色が見えた
どうしたも、こうしたも ねえよ…



「屯所で、猫飼うんだせ?…ったく
近藤さんの子供好きと動物好きには
呆れ返る。」



とっくりの中の酒がゆらり、と揺らいで
月の明かりに照らされた。
それを見ながら斎藤に言うと 斎藤は
珍しく ふ、と笑った



「てめ、斎藤 俺は別に猫なんて嫌いだからな 勘違いするんじゃねえ。」


「いえ、副長は変わられた と思いまして…まだ華山が来て一週間にもならないのに…みな、表情が柔らかくなってきたと




「…変わった…な。」


再度ため息をついて 後ろに手をついた
確かに、総司も 近藤さんも
そして 斎藤まで柔らかくなっている。
やはり、あのバカがみんなの楽しみ、と言うか もう仲間として新撰組は受け入れているみてぇだ。


「ところで、副長」
「なんだ」


斎藤は俺に向き合って いつもより
真剣な顔で 口を開いた



「…副長は 何色の猫が好みでしょうか、この斎藤 副長の命令とあらば 猫を…」


「…だから 好きじゃねえって
言ってんだろォがあああああッ‼︎」




土方の怒号が、屯所の浴場まで
響きわたったのだった。