「巡察は組ごとに決まってて、今日は一番組が朝、夜する事になってるから」

へー、と頷きながら賑わう町を眺める
物を買う人、おしゃべりする人
居酒屋帰りか 眠そうに道を歩いて行く人


うろうろしているとお散歩みたいになってくる みんな真剣そのものだが
私と総司の緊張感が無いに等しい(笑)


「やっ…やめて…」

『ん?』

近くから叫び声の様なものが聞こえてきた 総司は気づいていないらしく スタスタ前に行ってしまう



『…ちょっと抜けるね!』
「え、鈴!」


組の中から するり、と抜けて薄暗い路地を走る チリン、チリ と鈴を鳴らしながらさっきの声を探す

「離してッ」


もっと近くて声が聞こえてまるで疾風の様に走って行くと3人ぐらいの浪士が1人の女の子に迫っていた 人気の無いこんなところで 穏やかな行いではない。


『ねえ?おじさんたち 何してんの?』

声をかけると大柄な男がこちらをジロ
と睨んで ああ”?と答えた


鼻で笑いそうになる。
そんなの怖くない、私が居るところは
もっと怖い鬼がいるんだ(土方)


すると他の2人も振り向いて
こちらを睨んだ



「なんだ?小童、邪魔立てするなら容赦はせんぞ」


『邪魔?別に何もしてないけど? そういう事言う人ってやましい事考えてる人だよね?』


「うるせえ、この娘が我ら勤皇の志士に酒のしゃくもできねえ と言ったんだ」


勤皇の志士?ってことは…。

「邪魔すんじゃねえ、殺すぞ」

長州の連中。



ザワリ と私の周りの空気が一変した
…ククッ、と薄く笑うと3人の男達は気分を害した様で殺気を放った


「てめぇ、早くどっか行け…」


『黙れよ、力の弱い女捕まえてぐずってる 馬鹿共』


「ああ”⁉︎」


男たちが逆上して刀に手をやった、女の人は危ないからこっちへ引っ張る


『かかって来なよ、まとめて相手してあげる』



華山は同性でも見とれるほどの美しい笑顔を顔に貼り付けて ニタリと笑った
男たちはゾクリ、と背中が凍る思いだったが 目の前の美しい美少年に襲いかかった。




鈴の音が同時に鳴り響いたそして飛び散る赤い華、 3人の男は3人とも腕を切りつけられた 見事な立ち振る舞いだった
そして同時にこいつには勝てないと悟った。



『大丈夫ですか?』


私は怯える少女に声をかけた
少女はこくり、と頷いた

「ありがとうございますっ…」


少女はペコペコ頭を下げる、可愛らしい女の子だった くりくりとした目が印象的な美しい着物を着た女の子。


「あのお名前は?後日お礼をしたいのですが…」

『あはは、いいよたいしたことないし、それより無事でよかった、路地は危険だから1人でいないほうがいいよ』


「はい」


少女はこくっとうなずいた それでもまだ何か聞きたそうな顔をしている
えっと…


『私は新選組の華山鈴です』