☆*:星降る夜に鈴の音.:*☆誠の華

土方side

平助と総司が来た後、鈴は泥のように眠り出した 揺すっても 起きないぐらいの爆睡だ。



「はあ…」

隊務を片付けてから、開け放した障子の窓の外は夕日が赤く染まっていた。

もう夕方か、そう言えば鈴はどうしただろうか 机から立ち上がって鈴が眠る自分の布団の枕元に どかり、と胡座をかいた



『…すぅ…』


やはり、寝ている
長い睫毛を伏せて、いつもは桜色した頰が高揚している すこし荒くて弱々しい吐息が規則正しく口から漏れていた



『う…』



額から、もう温い布を取って側に置いてある氷水に浸した。



…自分は何故コイツに布団を貸しているのだろう。


少し疑問に思ったが自分は風邪を引かないタチなので別にいいか、ということでコイツを放置しているが。


パシャリ、と冷たくなった布を水気が無くなるまで絞りこんで 鈴の額に当てた



『お、か…お母さん』


また、コイツの寝言だ どれだけお母さんが恋しいんだよ ガキじゃあるまい…

…ガキか。 まだ数えで16だもんな


こんなに言うぐらいなんだ、愛していたんだろう 今じゃ1人らしいが



だから、長州の連中を殺りまくったんだろうな こんなに小さい少女が1人
血の海に居て、桜を眺めて
自分の身なんて顧みずに切りまくった。

初めてコイツを見たときなんて
黒くて、なんて儚い目をしたやつ
なんだろうと思った。

その瞳には 嫌悪と、孤独と、憎しみ。
それだけだった

そして仲間に入れてやると その眼が
変わった

羨みと、孤独。
多分仲間は欲しかったんだと思う
でも、アイツの中で線引きされてる
らしい…自分と、志しを持つ人とで。
自分とでは違う、自分は罪人と分かっている目…



どうにかして、コイツを信用できる駒に仕立て上げたい。新撰組には必要な人材だ、小柄で きっと島原でも変装ぐらいはできて、それに一度決めたもんの忠誠心は 凄い奴だ、と土方は思う



『ん…』


薄く、鈴が目を開いた
黒い瞳が夕焼けに染まる。



「鈴、起きたか?」



聞いても、鈴は目を動かしているだけ。
やはり、薬を飲ませるべきだ



俺は立ち上がって、石田散薬を飲ませる準備をして 枕元に座った